人件費は1時間いくら?|月給を時間で割ると4割足りない
見積もりに人件費を乗せるとき、月給を労働時間で割った数字を使っていないでしょうか。
月給30万円、月20日×8時間で160時間。割ると1,875円/時。この数字で見積もると、実際にかかっている額に届きません。
足りないもの
同じ人について、年間で見るとこうなります。
| 年間 | 時間あたり | |
|---|---|---|
| 給与(月給30万 × 12) | 3,600,000 円 | 1,875 円 |
| 賞与(年60万) | 600,000 円 | +312 円 |
| 法定福利費(会社負担・16%) | 672,000 円 | +350 円 |
| その他(通勤費・退職金の引当など) | 200,000 円 | +104 円 |
| 合計 | 5,072,000 円 | 2,642 円 |
年間の就業時間は240日×8時間で1,920時間としています。
月給だけで割った数字 1,875 円/時
実際にかかっている額 2,642 円/時 → 4割 違う
法定福利費が一番見落とされる
賞与を忘れる人は少ないと思います。落ちやすいのは法定福利費です。
健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険には会社が払う分があり、合わせて給与のおよそ15〜16%になります。賞与にもかかります。
見落とされやすいのは、給与明細に出てこないからです。明細に載っているのは本人の負担分で、会社の負担分は同じくらいの額がもう一方にあります。
金額としては小さくありません。この例では年間67万円、時間あたり350円です。見積もりでここを落とすと、取れば取るほど赤字になるという形になります。
なお率は年度と都道府県、業種で変わります。正確な数字は協会けんぽの保険料額表と労働保険の料率表で確認してください。
計算そのものは人件費(マンチャージ)計算ツールで出せます。
⚠ 稼働率を掛けてはいけない
機械チャージには稼働率を掛けます。年間の操業時間に対して、実際に削っている割合が75%なら、固定費は75%の時間で回収することになります。
同じ考え方を人件費に持ち込むと、二重に見込むことになります。
理由は、時間の入れ方が違うからです。
機械の場合、機械が止まっている時間にも固定費はかかり続けます。動いていない時間の分を、動いた時間に乗せないと回収できません。だから稼働率で割ります。
人件費の場合、製造コスト計算では工程ごとに加工時間・段取り時間・準備時間を、実際にかかる時間として入れます。朝礼も清掃も手待ちも、そもそもここには入っていません。
単価の側でも割り引くと、同じものを2回引くことになります。
時間単価に直接作業率を掛ける → 単価が2〜3割上がる
工程側にも実際の時間だけを入れる → その分がもう一度乗る
ここで出すのは「その人を1時間使うと、いくらかかるか」です。何時間使うかは工程側で決めます。役割を分けておくと、どちらを直せばいいかが分かります。
1人で複数台を見る場合
1人で2台を見ているなら、機械1台あたりの人件費は半分になります。この考え方自体は正しいのですが、時間単価に按分を含めるのは勧められません。
1人あたりの台数は、仕事によって変わるからです。段取り中は付きっきりで、加工が始まれば隣の機械を見て、また戻る。同じ人でも、その日の仕事で変わります。
按分した数字を「うちの人件費は1,300円」として持ってしまうと、その按分が毎回ついて回ります。付きっきりの仕事にも半額が適用されて、そこで赤字になります。
単価は素のまま持ち、按分は工程側の時間で調整する。このやり方なら、仕事ごとに変えられます。
加工時間だけに乗るのではない
人件費が乗るのは、機械が動いている時間だけではありません。
| 人件費 | 機械チャージ | |
|---|---|---|
| 加工 | 乗る | 乗る |
| 段取り | 乗る | 乗る(機械を占有するため) |
| プログラム作成・準備 | 乗る | 乗らない(機械は動いていない) |
プログラムを組んでいる時間、図面を読んでいる時間、治具を作っている時間にも人件費はかかっています。機械の前に立っていないので、見積もりから落ちやすい部分です。
段取り時間に機械チャージを乗せるかどうかについては、意見が分かれます。→ 段取り時間は原価にどう入れる?
まとめ
- 月給を労働時間で割った数字は、実際より4割低い
- 落ちやすいのは法定福利費。会社負担分は給与明細に出てこない
- 稼働率は掛けない。実際の時間は工程側で入れるので、二重に見込むことになる
- 台数按分も単価に入れない。仕事ごとに変わるものを単価に固定しない
- 人件費はプログラム作成・準備の時間にも乗る。機械の前にいない時間が落ちやすい