検査費はいくら乗るのか|全数と抜取りで1個368円変わる
検査費の式そのものは、迷うところがありません。
検査費 = 検査個数 × 検査時間 × 検査チャージ
分かれるのは、この3つに何を入れるかです。3つとも、実態より小さく入れやすい向きに揃っています。
この記事では、同じ部品で3つの数字だけを動かして、金額を並べます。使うのは製造コスト計算のサンプル(100個・旋盤とマシニング・熱処理・三次元測定)で、部品1個の原価は 2,236円です。
検査個数 — 全数か、抜取りか、初品だけか
まず範囲だけを変えます。検査時間6分、検査チャージ4,000円/時は動かしません。
| 検査の範囲 | 検査する数 | 検査費(100個ぶん) | 1個あたり | 部品1個の原価 |
|---|---|---|---|---|
| 初品のみ(3個) | 3個 | 1,200 円 | 12 円 | 2,204 円 |
| 抜取り 10% | 11個 | 4,400 円 | 44 円 | 2,236 円 |
| 抜取り 30% | 31個 | 12,400 円 | 124 円 | 2,316 円 |
| 全数 | 103個 | 41,200 円 | 412 円 | 2,604 円 |
実務でよく比べるのは、抜取りと全数です。
抜取り 10% 44 円 → 部品1個 2,236 円
全数 412 円 → 部品1個 2,604 円
差 368 円
同じ部品・同じ検査時間・同じチャージで、範囲を変えただけで1個368円動きます。
初品だけと全数なら400円、部品の原価は 2,204円 から 2,604円 に動きます。全数のときは、部品1個の原価 2,604円 のうち 412円(16%)が検査費です。
全数検査は、納品数ではなく投入数を見る
表の全数が「103個」になっているのは、不良の見込み3個を足した投入数だからです。
流した数を全部見るのが全数検査なので、途中で落ちるものも検査台には乗ります。100個で計算すると、そのぶん安く出ます。
⚠ 検査チャージに、測定機が入っていない
一番よく落ちるのはここだと思います。
検査チャージを「検査員の人件費」だけで組んでいると、測定機のぶんが丸ごと抜けます。
全数検査のまま、チャージだけを変えるとこうなります。
| 検査チャージ | 検査費(100個ぶん) | 部品1個の原価 |
|---|---|---|
| 検査員だけ 2,500円/時 | 25,750 円 | 2,450 円 |
| 三次元込み 4,000円/時 | 41,200 円 | 2,604 円 |
| 三次元込み 6,000円/時 | 61,800 円 | 2,810 円 |
同じ100個で 15,450円の差です。
三次元測定機は機械です。機械には機械チャージが立ちます。考え方は加工機とまったく同じで、年間の固定費を年間の実稼働時間で割るだけです。→ 機械チャージの計算方法
検査チャージ = 検査員の人件費 + 測定機の機械チャージ
ノギスとマイクロメータだけで済む検査なら、測定機のチャージはほぼ0でかまいません。問題は、三次元測定機や輪郭形状測定機を使っているのに、人件費だけで出している場合です。数百万円から数千万円の設備が、原価のどこにも乗っていないことになります。
検査時間は、測っている時間だけではない
「1個6分」の中身を分けると、たいてい測定そのものは半分もありません。
| ワークのセット・取り外し | 治具に乗せる、基準を出す。測定機ほど時間がかかる |
| 測定 | 実際に当てている時間 |
| 記録 | 数値の転記、判定 |
| 検査成績書の作成 | 提出が要る客先なら、ここも仕事 |
| 初品の待ち | 初品が通るまで次工程が動けないなら、その待ちも原価 |
全数検査のまま、1個あたりの時間だけを変えるとこうなります。
| 1個あたりの検査時間 | 検査費(100個ぶん) | 部品1個の原価 |
|---|---|---|
| 6分 | 41,200 円 | 2,604 円 |
| 3分 | 20,600 円 | 2,398 円 |
| 1分 | 6,867 円 | 2,261 円 |
検査費そのものは6倍動きますが、検査時間を6倍にしたのだから当然です。見るのは右の列で、部品1個の原価は 2,604円 から 2,261円 で、13%下がります。検査の範囲を全数から初品だけに変えたとき(15%)と、ほぼ同じ幅です。
見積もりに入れるときは、測る時間ではなく、検査台に部品が乗ってから降りるまでの時間を入れる方が実態に近くなります。
ロットが小さいと、初品検査が重くなる
初品検査は個数が固定なので、ロットで割ると効き方が変わります。
初品3個・6分・4,000円/時なら、検査費はいつでも 1,200円 です。それを納品数で割ると、こうなります。
| 納品数 | 1個あたりの検査費 |
|---|---|
| 10個 | 120 円 |
| 50個 | 24 円 |
| 100個 | 12 円 |
| 500個 | 2.4 円 |
10個と500個で50倍です。納品数が50倍なので、1個あたりはちょうど50分の1になります。段取り費と同じ形で、ロットに1回しか発生しないものは、小ロットで効きます。→ 同じ図面でも、10個と100個で単価が変わる理由
小ロットの見積もりで「検査費は誤差だから」と外すと、その誤差が一番大きい数量で外していることになります。
まとめ
- 検査費は 検査個数 × 検査時間 × 検査チャージ。3つとも小さく入れやすい
- 同じ部品で、初品だけ12円/抜取り10%44円/全数412円(1個あたり)
- 全数検査は投入数を見る。納品数で計算すると安く出る
- 検査チャージに測定機のぶんを入れる。入れないと100個で15,450円安く出る
- 検査時間は測る時間ではなく、セットから記録・成績書まで
- 初品検査はロットに1回。10個なら120円、500個なら2円
自社の条件で並べるなら製造コスト計算で、検査の行を全数と抜取りの2通りにして比べられます。 測定機のチャージは機械チャージ計算で、検査員の時間単価は人件費計算で出せます。
見積もりから検査費そのものが抜けているケースは、見積もりで抜けやすい5つにまとめています。