機械チャージの計算方法|何を含めて、何を含めないか

公開 2026/9/3 ・ 見積もり・原価 ・ およそ7分で読めます

機械チャージ(アワーレート)の計算式は、実のところ1つしかありません。

機械チャージ = 年間固定費 ÷ 年間実稼働時間

割り算です。迷うのは式ではなく、分子と分母に何を入れるかの方だと思います。

そして何を入れるかは、会社によって違います。 同じ「機械チャージ」という言葉で、桁が一つ違う数字を指していることもあります。この記事では、このサイトがどう決めているかを書きます。正解を示すものではありません。

他社がいくらでやっているかについては機械チャージの相場はいくら?に書いています。

分母が答えを大きく変える

先に分母から見ます。ここを間違えると、何を分子に入れても合いません。

分母は「機械が実際に削っている時間」です。会社が動いている時間でも、機械の前に人がいる時間でもありません。

年間実稼働時間 = 稼働日数 × 稼働時間 × 12ヶ月 × 稼働率

稼働率で外れるものが、段取り・メンテナンス・材料待ち・図面待ち・機械が空いている時間です。

同じ機械で、稼働率だけ変えて計算してみます。取得価格1,500万円・10年償却、家賃60万円/年、保険料と固定資産税で20万円/年。稼働20日/月・8時間/日とします。

稼働率年間実稼働時間機械チャージ
100%1,920時間1,198円/時
90%1,728時間1,331円/時
80%1,536時間1,497円/時
75%1,440時間1,597円/時
70%1,344時間1,711円/時
60%1,152時間1,997円/時
50%960時間2,396円/時

分子は一円も変えていません。 稼働率100%と50%で、倍違います。

稼働率を低く見るほどチャージは高く出ます。 分母が小さくなるからです。そして低く見る方が実態に近いことが多いと思います。1日8時間、機械が止まらずに削り続けている工場は、あまり多くないはずです。

ここを100%で計算していると、機械チャージが実態の半分になります。

何を含めるか

分子に入れるのは、機械を持っているだけでかかる費用です。動かしても動かさなくても出ていくもの、と考えると分かりやすいと思います。

含める中身
減価償却費取得価格 ÷ 償却年数。会計上の数字をそのまま使ってもよい
設置スペースの家賃工場全体の家賃を、その機械の占有面積で按分する
保険料・固定資産税その機械にかかる分
金利借入やリースがある場合の、年間の利息
その他の固定費保守契約料など、動かさなくてもかかるもの

何を含めないか

ここが分かれるところです。このサイトは3つを外しています。

工具費を外す理由

工具費を機械チャージに入れると、原価計算のときに二重計上になります。

製造コストを出すときは、工具費を「工具価格 ÷ 寿命個数」で別に持ちます。機械チャージにも工具費が入っていると、同じ費用を2回数えることになります。

そしてもう一つ、工具の比較ができなくなります。

工具費/個加工時間合計
高い工具高い短い(速度を上げられる)?
安い工具安い長い?

どちらが得かは、機械チャージ次第で逆転します。 工具費が機械チャージに埋まっていると、この比較そのものが成立しません。分けておくと、2回計算して並べるだけで確かめられます。

電力・切削油を外す理由

これらは動かすとかかる費用です。機械が止まっていれば発生しません。

機械チャージは「機械を1時間確保するのにかかる固定費」なので、性質が違います。変動費として別に持ち、加工時間に掛ける方が実態に近くなります。

金額としては大きくないことが多いので、分からなければ0のままでも全体の傾向は見えます。

人件費を外す理由

人と設備は別々に数えます。

理由は2つあります。ひとつは、段取り中と加工中で人の関わり方が違うこと。もうひとつは、1人で複数台を見ている場合に按分が要ることです。合算してしまうと、どちらも表現できなくなります。

このサイトの機械チャージ 1,597円/時
+ 人件費              2,500円/時
=                     4,097円/時   ← こちらが「加工チャージ」に近い

比べるときは、何を含めた数字なのかを先に確かめる必要があります。

工具を変えたら得か損か、2回計算すれば分かる

工具費を分けておくと、そのまま比較に使えます。

マシニングの工具を変えたと考えてみます。

安い工具高い工具
工具価格12,000円30,000円
寿命400個600個
加工時間5分/個4分/個(速度を上げられる)
工具費30円/個50円/個
加工費438円/個350円/個

工具費は20円上がりますが、加工費が88円下がります。

納品1個あたりロット100個
安い工具2,236円223,643円
高い工具2,167円216,691円
70円6,952円

高い工具の方が安く仕上がりました。

もちろん、いつもこうなるとは限りません。機械チャージが低ければ、時間短縮の効果が小さくなって逆転します。 だから「高い工具は得か」という問いに一般的な答えはなく、自社の機械チャージで計算するしかありません。

そして工具費が機械チャージに埋まっていると、この比較そのものができません。 分けておく理由はここにあります。

製造コスト計算ツールで条件を変えて2回計算すれば、そのまま並べられます。

償却が終わった機械をどう見るか

ここは分かれます。

会計上、償却が終わった機械の減価償却費はゼロです。そのまま入れると、先ほどの例では1,597円/時が556円/時になります。3分の1です。

機械チャージ
償却中1,597円/時
償却済み(そのまま)556円/時

この数字で見積もりを出すと、たしかに安く出せます。 実際、償却の終わった機械を持っていることは競争力になります。

一方で、いずれ更新は必要です。更新のための積立分を乗せておくという考え方もあります。そうしないと、機械を買い替えた瞬間にチャージが3倍になって、値上げをお願いすることになります。

どちらが正しいという話ではありません。 会社の方針です。ただ、どちらで計算したかは自覚しておいた方がいいと思います。

→ このため、機械チャージ計算ツールには「償却費を直接入力する」モードを置いています。

機械が違えば、当然変わる

同じ計算で、取得価格だけ変えてみます(稼働率75%)。

取得価格年間固定費機械チャージ
1,500万円230万円1,597円/時
3,000万円380万円2,639円/時

汎用旋盤とマシニングセンタで数字が違うのは、当たり前ということになります。

そして大型の機械で小型の部品を作れば割高になるのも、ここから説明がつきます。機械チャージが高いからではなく、その機械でやる仕事ではないからです。

出した数字は、単体では原価にならない

機械チャージは時間単価です。これだけでは何も出ません。

加工費 = (機械チャージ + 変動費) × 加工時間

加工時間を掛けて、初めて金額になります。 そこに材料費・人件費・工具費・段取り費・検査費が乗って、1個あたりの原価になります。

機械チャージを正確に出しても、加工時間が勘のままだと、精度は加工時間の側で決まります。 どちらか一方だけを詰めても、全体は良くなりません。

まとめ

  • 式は年間固定費 ÷ 年間実稼働時間の1つだけ
  • 分母が効く。 稼働率100%と50%で倍違う。低く見る方が実態に近いことが多い
  • 含めるのは、動かさなくてもかかる費用(償却・家賃・保険料・金利)
  • 工具費は外す。 二重計上になり、工具の比較ができなくなる
  • 人件費も外す。 ただし世の中の「加工チャージ」は人件費込みのことが多い
  • 償却済みの機械をどう見るかは会社の方針。自覚しておく

自社の数字を出すなら機械チャージ計算ツールに入れてみてください。結果はそのまま製造コスト計算に渡せます。

出した数字を使って1個あたりの原価まで出す手順は、加工の見積もりの出し方にまとめています。

小次郎 切削工具・測定工具の販売(卸売)と、 NC旋盤・マシニングセンタでの加工。両方の実務経験があります。 運営者情報