材料記号の読み方|SS400の400とSUS304の304は意味が違う
図面の材質欄に SS400、S45C、SUS304 と並んでいる。
どれも英字と数字の組み合わせなので、同じルールで付けられた番号のように見えます。ところが、この3つは数字の意味がそれぞれ違います。
読み方を知らないままでも仕事は回りますが、知っていると、材料を手配するときに間違いに気づけます。
記号は3つの部分でできている
日本規格協会の標準化教育教材では、鉄鋼記号は「材質」「製品名・規格名」「種類」の3つの部分でできていると説明されています。
S S 400
│ │ └── 種類を表す数字
│ └────── 製品名・規格名(S = Structure、一般構造用)
└───────── 材質(S = Steel、鋼)
SUS 304
│ └── 種類を表す番号
└─────── ステンレス鋼を表す記号 ⚠ 3文字の分け方には諸説あります(後述)
問題は3番目の「種類」です。 ここに入る数字が、材料によって別のものを指しています。
① 強さを表す数字 — SS400
日本規格協会の教材では、SS400 の「400」は引張強さの下限を表すと説明されています。単位は N/mm²。
チタンの TB340 も同じ系統です。T = チタン、B = 棒(Bar)、340 が引張強さの下限。板なら TP、条なら TR、線なら TW と、2文字目が形状に変わります。
SS400 が規定されているのは JIS G 3101(一般構造用圧延鋼材) です。橋梁・船舶・車両といった構造物に使う熱間圧延鋼材が対象で、板・棒・形鋼・平鋼と、形状をまとめて1つの規格が持っています。
② 炭素量を表す数字 — S45C
S45C の「45」は、含まれている炭素の量です。代表的な値を100倍した数字だと説明されています。末尾の C は Carbon。
S45C が規定されているのは JIS G 4051(機械構造用炭素鋼鋼材) です。熱間圧延・熱間鍛造・熱間押出で作られる鋼材が対象で、そのあとさらに切削や熱処理をして使うことが前提になっています。
⚠ この規格に鋼管は含まれません。 丸棒の S45C と、管の材料は別の規格です。
合金鋼の SCM435 になると、また少し組み立てが変わります。S = 鋼、CM = クロムモリブデン、4 = 合金元素量のコード、35 = 炭素量。炭素量が末尾に来るぶん、S45C とは並び順が逆です。
③ 海外の番号がそのまま入っているもの
ここが一番、知られていないところだと思います。
| 記号 | 番号の出どころ | 番号が表しているもの |
|---|---|---|
| SUS304 の 304 | AISI(アメリカ鉄鋼協会) | 200番台=Mn系、300番台=Ni系、400番台=Cr系 |
| A5052 の 5052 | AA(アメリカアルミニウム協会) | 1000=純Al、2000=Al-Cu、5000=Al-Mg、6000=Al-Mg-Si、7000=Al-Zn-Mg |
| C3604 の 3604 | CDA(アメリカ銅開発協会) | 2桁目が合金系。3 = Cu-Zn-Pb(快削黄銅) |
ステンレス協会の公表資料によると、SUS の番号は 1972年の規格改正で AISI の番号に準じる形に切り替えられたものです。日本で決めた番号ではありません。
つまり、SS400 の 400 は性質を表す数字で、SUS304 の 304 は分類の番号です。
304 のほうが数字は小さいから弱い、といった比較は成り立ちません。そもそも並べて比べられる数字ではないということになります。
末尾の記号は、中身の違いを表している
SUS の後ろに付く英字は、成分をいじった印です。
L 低炭素 SUS304L
F 快削 SUS430F
N 窒素添加 SUS304N1
J1 日本独自の鋼種(AISI に対応する番号がない)
炭素鋼側では、-D9 のような表記が付くことがあります。D は冷間引抜(Drawn)で、数字は寸法の精度等級です。同じ S45C でも、黒皮の丸棒とミガキ材では表記が変わります。
⚠ 同じ材質でも、形状が変われば規格が変わる
ここは実務で一番効いてくるところです。
SUS304 という材質は1つですが、適用される規格は納入される形状で分かれています。
| 形状 | 規格番号 |
|---|---|
| 棒 | JIS G 4303(ステンレス鋼棒) |
| 熱間圧延の板・帯 | JIS G 4304 |
| 冷間圧延の板・帯 | JIS G 4305 |
| 冷間仕上の棒 | JIS G 4318 |
ミルシートに載るのは、実際に納入された形状の規格1つだけです。「SUS304 の規格」という単一のものがあるわけではありません。
そして、形状が変わると、選べる鋼種そのものが変わります。
⚠ SUS303 は、冷間圧延の板・帯の規格に収載されていません。 快削ステンレスは棒や線の規格側にあります。板で SUS303 を探しても出てこないのは、在庫がないからではなく、規格に無いからです。
規格番号の早見表
材質から規格番号を引きたいときのために、まとめておきます。
| 材料 | 規格番号 | 表題 |
|---|---|---|
| SS400 | JIS G 3101 | 一般構造用圧延鋼材 |
| S45C | JIS G 4051 | 機械構造用炭素鋼鋼材 |
| SCM435 / SCM440 | JIS G 4053 | 機械構造用合金鋼鋼材 |
| SUS 棒 | JIS G 4303 | ステンレス鋼棒 |
| SUS 熱延板 | JIS G 4304 | 熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯 |
| SUS 冷延板 | JIS G 4305 | 冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯 |
| アルミ 板 | JIS H 4000 | アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条 |
| アルミ 棒・線 | JIS H 4040 | 同 棒及び線 |
| アルミ 押出形材 | JIS H 4100 | 同 押出形材 |
| 銅 板・条 | JIS H 3100 | 銅及び銅合金の板及び条 |
| 銅 棒 | JIS H 3250 | 銅及び銅合金の棒 |
| チタン 板 | JIS H 4600 | チタン及びチタン合金―板及び条 |
| チタン 棒 | JIS H 4650 | チタン及びチタン合金―棒 |
規格番号だけなら、日本産業標準調査会(JISC)の検索で誰でも確認できます。発効年は書いていません。JIS は最新版が効力を持つためです。
⚠ 廃止された規格番号が、今も出回っています
JIS G 4105 クロムモリブデン鋼鋼材 2003年に廃止。JIS G 4053 に統合
JIS G 0204 鉄鋼用語(分類及び定義) 2014年に廃止。JIS G 0203 に統合
「JIS G 4105 準拠」と書かれた資料を、今でも見かけます。 20年以上前に無くなった番号なので、そのまま図面や仕様書に引くと話が合わなくなります。
⚠ SUS の綴りには諸説あります
よく見かけるのは、この2つです。
Steel Use Stainless S / U / S ← 3語で3文字。そのまま合う
Steel Special Use Stainless ⚠ 4語ある
上のほうが素直です。 語の数と文字の数が一致します。
⚠ 下は4語なのに3文字なので、そのままでは対応しません。 Special を頭文字に数えない、という説明が添えられていることが多いのですが、なぜそうなるのかを書いた一次資料は見つかりませんでした。
日本規格協会の教材は下を採っています。規格本文での定義は確認できていません。
そのため、この記事では SUS を1文字ずつに分解していません。 どちらが正しいか決められないものを分解した形で書くと、誤りがそのまま残ります。「ステンレス鋼を表す記号」として扱っています。
出典
- 日本規格協会 標準化教育プログラム「機械材料に関わる標準」
- ステンレス協会 よくある質問(SUS の番号体系について)
- 日本産業標準調査会(JISC)JIS検索、および日本規格協会の規格プレビュー
⚠ 規格票そのものには著作権があります。 この記事で書いているのは規格番号と表題、および上記の解説資料に基づく記号の読み方で、規格の中の表を引き写したものではありません。