S45CとSCM435の違い|見積もりで何が変わるか

公開 2026/9/3 ・ 材料・工具 ・ およそ5分で読めます

図面の材質欄が S45C から SCM435 に変わったとき、見積もりの何が動くのか。

材料の単価だけを差し替えて出していると、加工の側で足りなくなることがあります。

この記事はどちらを選ぶべきかという話ではありません。 図面はもう来ています。受ける側から見て、金額のどこが変わるかをまとめます。

まず違いを1枚で

公開されている資料で、複数の出典が一致している内容だけを並べます。

S45CSCM435
区分機械構造用炭素鋼クロムモリブデン鋼
主な添加元素クロム・モリブデン
調質材の引張強さ690N/mm²級930N/mm²級
焼入れ性表面寄り芯まで入りやすい
芯まで硬さが期待できる径φ40程度までφ70程度まで
価格・入手性・加工性こちらが有利劣る

強度で選ぶならSCM435、価格と扱いやすさならS45Cという整理になります。

⚠ 数値は目安です。 実際の値はメーカーや熱処理条件で変わります。強度計算に使う場合は、材料メーカーのミルシートや規格をご確認ください。

変わるのは4つ

見積もりの側から見ると、動くのはこの4か所です。

どう動くか
① 材料費キロ単価が上がる
② 加工費切削速度を落とすことになり、加工時間が伸びる
③ 工具費工具寿命が短くなる
④ 外注費熱処理の指定が変わる

比重はほぼ同じ(どちらも約7.85)なので、重量は変わりません。 変わるのはキロ単価の方です。

① 材料費

同じ形状なら、重量は同じです。 差はキロ単価だけです。

φ50 × 105mm の丸棒で計算すると、重量は 1.618kg。ここにキロ単価を掛けます。

キロ単価材料費納品1個あたりの原価
400円/kg647円2,236円
600円/kg971円2,570円

キロ単価が1.5倍になると、この部品では原価が15%上がります。

実際の単価差は、径・数量・時期で変わります。 見積もりのたびに材料屋に確認するのが確実だと思います。

→ 重量から材料費を出すなら材料重量計算ツールへ。

② 加工費

ここが抜けやすいところです。

SCM435はS45Cより硬く、粘りもあります。同じ切削条件で削ると、工具が持ちません。 切削速度を落とすことになり、加工時間が伸びます。

旋盤の加工時間が8分から10分に伸びたとして、計算してみます。

旋盤の費用納品1個あたりの原価
8分/個621円2,236円
10分/個761円2,377円

加工時間が25%伸びると、原価が6%上がります。

材料費の差と足すと、材料と加工の両方で1割以上変わることになります。材料単価だけ差し替えて出すと、この分が落ちます。

⚠ どのくらい落とすかは、工具の材種と機械の条件で変わります。 具体的な数字は工具メーカーのカタログを見てください。→ カタログの切削条件をそのまま使えない理由

③ 工具費

工具寿命が短くなります。

ただし、金額としてはそれほど大きくないことが多いです。工具価格3,000円で寿命が300個から200個に落ちても、10円から15円になるだけです。

②の加工時間の方が、はるかに大きく効きます。 工具代を気にして切削条件を落とすと、かえって高くつくことがあります。

④ 熱処理の指定

SCM435が指定される理由の多くは、焼入れ性だと思います。

芯まで硬さが期待できる径
S45Cφ40程度まで
SCM435φ70程度まで

太物で芯まで硬さが要る部品なら、S45Cでは仕様を満たせません。 材質の指定は、この理由で来ていることがあります。

見積もりの側では、熱処理の外注費が変わることになります。処理の種類が変われば単価も変わりますし、そもそも熱処理の指定があるかどうかで、工程が1つ増えます。

全部を足すとどうなるか

材料単価が1.5倍、加工時間が25%増、工具寿命が3分の2になったとします。

S45C     2,236円/個
SCM435   2,570円 + 加工時間の増分 + 工具費の増分

材料費だけを差し替えると2,570円ですが、加工の分が乗ると2,700円を超えます。

数字そのものより、「材料単価だけ変えて出すと足りない」というところが要点だと思います。

→ 自分の条件で確かめるなら製造コスト計算ツールで2回計算して並べてください。

材質が変わったら確認したいこと

キロ単価材料屋に確認。径と数量で変わる
在庫があるかSCM435は径によっては在庫が薄いことがある。納期に効く
切削条件工具メーカーのカタログ。材種ごとに推奨が違う
熱処理の指定図面に書いてあるか。外注の工程が増えるか
調質材か生材か調質材(あらかじめ熱処理済み)は硬く、加工条件が変わる

最後の「調質材か生材か」は、図面に書かれていないことがあります。 確認しておかないと、届いてから条件を組み直すことになります。

まとめ

  • 比重はほぼ同じなので、重量は変わらない。変わるのはキロ単価
  • 加工時間が伸びる。 ここが抜けやすい
  • 工具寿命も短くなるが、金額としては加工時間の方がはるかに大きい
  • SCM435が指定される理由の多くは焼入れ性(太物で芯まで硬さが要る)
  • 材料単価だけ差し替えて出すと足りない

比重表と材料費の計算は材料重量計算ツールに、寸法の取り方は材料費の出し方にまとめています。

参考にした資料

小次郎 切削工具・測定工具の販売(卸売)と、 NC旋盤・マシニングセンタでの加工。両方の実務経験があります。 運営者情報