刃先交換の3分は、どこに入れるか|工具費と同じで、寿命で割る

公開 2026/9/17 ・ 見積もり・原価 ・ およそ4分で読めます

刃先が減ったので、交換した。その3分は、見積もりのどこに入るのか。

段取り時間に足すのか、加工時間に足すのか。どちらに入れても、出てくる数字が変わります。

⚠ まず、3つを混ぜないこと

「工具交換」という言葉が、現場では3つの別の作業を指しています。 話が噛み合わないときは、たいていここです。

誰がやるか機械頻度
A 段取りでの工具セット⚠ 止まっているロットに1回
B 寿命での交換(刃先交換)⚠ 止まっている寿命の個数ごと
C ATC(プログラム中の持ち替え)機械動いている1個に何回も

この記事で扱うのは B だけです。

A  → 段取り時間。⚠ 機械を占有するので、固定費ぶんの機械チャージも乗る
C  → 1個の加工時間。⚠ 制御装置の推定には入っていない

→ A は 段取り時間は原価にどう入れる? → C は 加工時間は計算で出るのか

AとCは頻度が決まっています。 A はロットに1回、C は1個に何回。 B だけが「何個作ったら1回」という数え方で、ここが厄介です。

★ 工具費と同じ構造になっている

工具の値段を1個あたりに直すとき、寿命の個数で割ります。

工具費/個 = 工具価格 ÷ 寿命の個数

交換にかかる時間も、まったく同じです。

交換時間/個 = 交換時間 ÷ 寿命の個数

工具費は割るのに、時間は割り忘れる。 ここが、この記事で一番言いたいところです。

実際に割ってみる

交換に3分、その工具で300個削れるとします。

3 ÷ 300 = 0.01 分/個

金額にします。 機械チャージ(⚠ 固定費ぶん)1,600円/時、人件費 2,500円/時 とすると、合わせて 4,100円/時 = 68.3円/分です。

0.01 分/個 × 68.3 円/分 = 0.68 円/個

この単価は例です。 自社の数字で置き換えてください。

⚠ 割らないと、寿命の個数ぶんだけずれる

「交換に3分かかった」を、そのまま加工時間に足すとどうなるか。

3 分/個 × 68.3 円/分 = 205 円/個

金額で見ます。100個のロットなら、

⭕ 正しい   0.68 円/個 ×  100個 =     68 円
⚠ 誤り      205 円/個 ×  100個 = 20,500 円

この誤りは気づきにくいです。 加工時間の欄は分単位なので、8分が11分になっても「そんなものか」と見えてしまいます。金額になって初めて出てきます。

機械は止まっている。それでも固定費は乗る

刃先交換をしている間、機械は動いていません。 それでも、機械を止めているぶんの費用は発生しています。

ただし「機械チャージを丸ごと乗せる」ではありません。 機械チャージの中身は2つに分かれます。

中身交換中は
減価償却・家賃など、時間で発生し続ける固定費発生している → 乗る
電力・切削油など、動かすとかかる変動費発生しない → 乗らない

段取りのときと同じ考え方です。 上で 68.3円/分 として使ったのは、固定費ぶんの機械チャージ + 人件費です。

段取り時間は原価にどう入れる?

機械チャージを一切乗せないのは、機械から離れてできる作業だけです。 CAD/CAM のプログラム作成のように、その間も機械が別の仕事を回せるなら、人件費だけになります。

⚠ 交換の3分に、付いてくるものがある

刃先を差し替えるだけなら3分でも、削り始めるまでにはもう少しかかります。

芯出し・工具長の測り直し
試し削り
寸法の確認

交換そのものは3分でも、戻るまでに15分ということがあります。これは現場で見ている範囲の話で、測った値ではありません。 工具の種類と機械で変わります。

見積もりに入れるのは「交換の時間」ではなく「戻るまでの時間」です。

金額で見ると、工具費の方が大きい

同じ条件で、工具費と交換時間を並べます。(工具価格 3,000円)

寿命工具費/個交換時間/個
300個10.0 円0.68 円
20個150.0 円10.2 円

どちらの寿命でも、工具費のほうが大きく出ます。

ただし、交換が長い現場では逆転します。 上は交換3分の計算です。段取りをやり直すような交換で20分かかるなら、寿命20個で 68.3円/個 になり、工具費の半分近くまで来ます。

★ ロットが寿命に届かないとき

ここが判断の分かれるところです。

ロット10個 / 寿命300個
→ このロットでは、1回も交換しない

それでも 0.01分/個 で見るのか。

見ます。 按分は「そのロット」ではなく、その工具を使い切るまでで考えます。

ロット単位で数えると、見積もりに使えなくなります。

300個まで   交換0回 → 0円
301個目     交換1回 → 急に跳ねる

同じ部品の見積もりが、数量で階段状に動くことになります。 実態には忠実ですが、客に出す数字としては説明できません。

ただし、専用工具は別です。 その仕事のためだけに買った工具は、次に使わないのでロットで割ります。

エンドミルの種類と選び方

⚠ このサイトの計算で、足りないところ

製造コスト計算には、工具価格と工具寿命の欄があります。 工具費は自動で1個あたりに直ります。

交換時間のほうには、専用の欄がありません。 上で出した 0.01分/個 は、加工時間に足し込む形になります。

加工時間 8 分/個 + 0.01 = 8.01 分/個

端数なので、入力欄の刻みによっては入りきりません。 交換が長い場合や寿命が短い場合ほど効いてくるので、そのときは手で足してください。

まとめ

⚠ 「工具交換」は3つある。混ぜない
   A 段取りでの工具セット   ロットに1回  → 段取り時間
   B 寿命での刃先交換       寿命ごと     → ★ この記事
   C ATC                  1個に何回    → 加工時間

★ B は工具費と同じ割り方
   交換時間/個 = 交換時間 ÷ 寿命の個数
   3分 ÷ 300個 = 0.01 分/個 = 0.68 円/個

⚠ 割らずに 3分/個 と入れると、寿命の個数ぶんだけずれる
   (寿命300個なら300倍、1,000個なら1,000倍)
⚠ 機械が止まっていても固定費は乗る(⚠ 電力・切削油は乗らない)
⚠ 入れるのは「交換の時間」ではなく「戻るまでの時間」
⚠ 按分はロットではなく、工具を使い切るまでで見る
   ただし専用工具はロットで割る

小次郎 切削工具・測定工具の販売(卸売)と、 NC旋盤・マシニングセンタでの加工。両方の実務経験があります。 運営者情報