面粗度は送りの2乗で効く|理論粗さが計算どおりに出ない理由
図面に Ra1.6 と書いてある。送りをいくつにすればいいか。
旋削の理論上の粗さは、送りと刃先Rだけで決まります。切削速度も材質も、式には入りません。
理論粗さ Rz = f² / (8R)
f 送り(mm/rev) R 刃先R(mm)
送り0.2mm/rev、刃先R0.8mm なら、Rz は 6.25µm です。自分の条件では理論粗さ計算ツールで出せます。
送りは2乗、刃先Rは1乗
式を見ると、送りは2乗、刃先Rは1乗で効きます。同じ「2倍」でも、効き方が違います。
| 変えるもの | 理論粗さ |
|---|---|
| 送りを半分にする(0.2 → 0.1) | 1/4 |
| 刃先Rを2倍にする(0.8 → 1.6) | 1/2 |
面を良くしたいとき、送りを触る方が倍の効率で効きます。
数字で並べると、こうなります。
| 送り | 刃先R | Rz | Ra |
|---|---|---|---|
| 0.30 | 0.8 | 14.06 µm | 3.61 µm |
| 0.20 | 0.8 | 6.25 µm | 1.60 µm |
| 0.10 | 0.8 | 1.56 µm | 0.40 µm |
| 0.05 | 0.8 | 0.39 µm | 0.10 µm |
| 0.20 | 1.6 | 3.13 µm | 0.80 µm |
| 0.20 | 0.4 | 12.50 µm | 3.21 µm |
Ra と Rz の関係
理論上の形(円弧が並んだ形)については、Ra も式で書けます。
Ra = f² / (18√3・R)
Rz ÷ Ra = 18√3 ÷ 8 = 3.90
理論上の粗さに限れば、Rz は Ra のおよそ3.9倍になります。「Ra は Rz の4分の1くらい」と言われるのは、ここから来ています。
実際の面は円弧が並んだ形ではなく、びびりの痕やむしれが混ざります。Ra は平均、Rz は山と谷の差なので、傷が1本あるだけで Rz だけが跳ね上がります。
理論上の形 Rz ÷ Ra = 3.9
実際に削った面 形によって変わる。3.9で換算してはいけない
図面が Ra 指示なら Ra で、Rz 指示なら Rz で測るのが確実です。
計算どおりには出ない
理論粗さは「これ以上は良くならない」という下限です。実際の面は、悪い側にしか外れません。
理由はいくつもあります。
| どうなるか | |
|---|---|
| 工具のたわみ・ワークのたわみ | 刃先が狙った位置にいない |
| びびり | 送りマークとは無関係の模様が出る |
| 構成刃先 | 低速で刃先に溶着した金属がむしれ、面が荒れる |
| 工具の摩耗 | 刃先Rが崩れ、式の前提が消える |
| 切りくずの噛み込み | 引きずった傷が残る |
送りを落としたのに面が良くならないとき、原因は送りではないことがあります。
特に、送りを落としているのに悪化するなら、構成刃先を疑ってみてください。低速で出やすいので、むしろ切削速度を上げると消えることがあります。
たわみが原因の場合は、突き出しと工具径を見直す方が早いです。→ 工具の突き出しは、たわみに3乗で効く
⚠ 刃先Rを大きくすると、逆に悪くなることがある
式の上では、刃先Rを大きくすれば粗さは良くなります。ただし現場では、逆に悪くなる場合があります。
刃先Rを大きくすると、ワークを押す向きの力(背分力)が増えます。細長いワークや、突き出しの長い工具では、その分だけ逃げます。
式の上 刃先R 0.8 → 1.6 粗さ 1/2
現場 背分力が増える → たわむ → 理論値から外れる
細物では、刃先Rを上げた方が面が悪くなることがあります。剛性が足りているかどうかで、答えが逆になる部分です。
「面が出ないから刃先Rを上げる」は、剛性に余裕があるときだけ効く手ということになります。
面粗度の指示が、原価を決めている
送りを半分にすると、加工時間はおよそ2倍になります。
同じ部品で、旋盤の加工時間を 8分 から 16分 に変えて計算すると、こうなります。
| 旋盤の加工時間 | 納品1個あたり |
|---|---|
| 8分 | 2,236 円 |
| 16分 | 2,816 円 |
1個あたり580円の差です。100個なら58,000円になります。
図面に書かれた面粗度は、そのまま加工時間の指示であり、金額の指示でもあります。指示が Ra1.6 なのか Ra0.8 なのかで、見積もりは変わって当然だということになります。
そして理論値でちょうど Ra1.6 になる条件(送り0.2・刃先R0.8)では、実際には Ra1.6 は出ません。上に書いたとおり悪い側に外れるので、2〜3割の余裕を見た送りにしておかないと、測定して落ちます。その余裕の分も原価です。
自分の条件でいくら動くかは製造コスト計算で2通り計算して並べられます。
まとめ
- 理論粗さは送りと刃先Rだけで決まる。切削速度も材質も式には入らない
- 送りは2乗、刃先Rは1乗。面を良くしたいなら送りを触る方が効く
- 理論上は Rz ≒ Ra × 3.9。ただし実際に削った面をこの比で換算してはいけない
- 理論値は下限で、実際は悪い側にしか外れない
- 刃先Rを上げると背分力が増える。細物では逆効果になることがある
- 送りを半分にすると加工時間はおよそ2倍。この例では1個あたり580円動く
粗さの計算と「この粗さを狙うなら送りはいくつか」の逆算は理論粗さ計算で、 送り速度そのものは切削条件計算で、 原価への効き方は製造コスト計算で確かめられます。