面粗度は送りの2乗で効く|理論粗さが計算どおりに出ない理由

公開 2026/9/4 ・ 加工・段取り ・ およそ4分で読めます

図面に Ra1.6 と書いてある。送りをいくつにすればいいか。

旋削の理論上の粗さは、送りと刃先Rだけで決まります。切削速度も材質も、式には入りません。

理論粗さ Rz = f² / (8R)

  f 送り(mm/rev)    R 刃先R(mm)

送り0.2mm/rev、刃先R0.8mm なら、Rz は 6.25µm です。自分の条件では理論粗さ計算ツールで出せます。

送りは2乗、刃先Rは1乗

式を見ると、送りは2乗、刃先Rは1乗で効きます。同じ「2倍」でも、効き方が違います。

変えるもの理論粗さ
送りを半分にする(0.2 → 0.1)1/4
刃先Rを2倍にする(0.8 → 1.6)1/2

面を良くしたいとき、送りを触る方が倍の効率で効きます。

数字で並べると、こうなります。

送り刃先RRzRa
0.300.814.06 µm3.61 µm
0.200.86.25 µm1.60 µm
0.100.81.56 µm0.40 µm
0.050.80.39 µm0.10 µm
0.201.63.13 µm0.80 µm
0.200.412.50 µm3.21 µm

Ra と Rz の関係

理論上の形(円弧が並んだ形)については、Ra も式で書けます。

Ra = f² / (18√3・R)

Rz ÷ Ra = 18√3 ÷ 8 = 3.90

理論上の粗さに限れば、Rz は Ra のおよそ3.9倍になります。「Ra は Rz の4分の1くらい」と言われるのは、ここから来ています。

実際の面は円弧が並んだ形ではなく、びびりの痕やむしれが混ざります。Ra は平均、Rz は山と谷の差なので、傷が1本あるだけで Rz だけが跳ね上がります。

理論上の形          Rz ÷ Ra = 3.9
実際に削った面      形によって変わる。3.9で換算してはいけない

図面が Ra 指示なら Ra で、Rz 指示なら Rz で測るのが確実です。

計算どおりには出ない

理論粗さは「これ以上は良くならない」という下限です。実際の面は、悪い側にしか外れません。

理由はいくつもあります。

どうなるか
工具のたわみ・ワークのたわみ刃先が狙った位置にいない
びびり送りマークとは無関係の模様が出る
構成刃先低速で刃先に溶着した金属がむしれ、面が荒れる
工具の摩耗刃先Rが崩れ、式の前提が消える
切りくずの噛み込み引きずった傷が残る

送りを落としたのに面が良くならないとき、原因は送りではないことがあります。

特に、送りを落としているのに悪化するなら、構成刃先を疑ってみてください。低速で出やすいので、むしろ切削速度を上げると消えることがあります。

たわみが原因の場合は、突き出しと工具径を見直す方が早いです。→ 工具の突き出しは、たわみに3乗で効く

⚠ 刃先Rを大きくすると、逆に悪くなることがある

式の上では、刃先Rを大きくすれば粗さは良くなります。ただし現場では、逆に悪くなる場合があります。

刃先Rを大きくすると、ワークを押す向きの力(背分力)が増えます。細長いワークや、突き出しの長い工具では、その分だけ逃げます。

式の上   刃先R 0.8 → 1.6   粗さ 1/2
現場     背分力が増える → たわむ → 理論値から外れる

細物では、刃先Rを上げた方が面が悪くなることがあります。剛性が足りているかどうかで、答えが逆になる部分です。

「面が出ないから刃先Rを上げる」は、剛性に余裕があるときだけ効く手ということになります。

面粗度の指示が、原価を決めている

送りを半分にすると、加工時間はおよそ2倍になります。

同じ部品で、旋盤の加工時間を 8分 から 16分 に変えて計算すると、こうなります。

旋盤の加工時間納品1個あたり
8分2,236 円
16分2,816 円

1個あたり580円の差です。100個なら58,000円になります。

図面に書かれた面粗度は、そのまま加工時間の指示であり、金額の指示でもあります。指示が Ra1.6 なのか Ra0.8 なのかで、見積もりは変わって当然だということになります。

そして理論値でちょうど Ra1.6 になる条件(送り0.2・刃先R0.8)では、実際には Ra1.6 は出ません。上に書いたとおり悪い側に外れるので、2〜3割の余裕を見た送りにしておかないと、測定して落ちます。その余裕の分も原価です。

自分の条件でいくら動くかは製造コスト計算で2通り計算して並べられます。

まとめ

  • 理論粗さは送りと刃先Rだけで決まる。切削速度も材質も式には入らない
  • 送りは2乗、刃先Rは1乗。面を良くしたいなら送りを触る方が効く
  • 理論上は Rz ≒ Ra × 3.9。ただし実際に削った面をこの比で換算してはいけない
  • 理論値は下限で、実際は悪い側にしか外れない
  • 刃先Rを上げると背分力が増える。細物では逆効果になることがある
  • 送りを半分にすると加工時間はおよそ2倍。この例では1個あたり580円動く

粗さの計算と「この粗さを狙うなら送りはいくつか」の逆算は理論粗さ計算で、 送り速度そのものは切削条件計算で、 原価への効き方は製造コスト計算で確かめられます。

小次郎 切削工具・測定工具の販売(卸売)と、 NC旋盤・マシニングセンタでの加工。両方の実務経験があります。 運営者情報